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FEATURE

いま改めて考える、"カルチャーとしてのファッション" シトウレイ ストリートスタイルフォトグラファーYOU ARE CULTURE SCHOOL. Vol.2 

2016.06.15
YAC SCHOOL

カルチャーの牽引者である方達によるトークイベント「YOU ARE CULTURE SCHOOL.」。二回目の講師は、日本を代表するストリートスタイルフォトグラファーで、WEBサイト「STYLEfromTOKYO」を主宰し、雑誌等様々な媒体で活躍するシトウレイさん。世界のモードと東京のストリートシーンをウォッチし続け、独自の視点でファッションを探求してきたシトウさんが、「ストリートスタイルシューティング」というカルチャーを通して考えた、カルチャーへの向き合い方を語ります。

1. 私に大きな影響を与えた「ストリートスタイルシューティング」

皆さんにとって、カルチャーとはどんなものでしょうか? そして、皆さんはどんなカルチャーの影響を受けてきましたか? きっと、それぞれ答えは違いますよね。私が一番影響を受けたものは、ストリートスタイルシューティングです。よくスナップと呼ばれているものですね。私はストリートスタイルシューティングをはじめてもう12年になるのですが、そのなかで、気づいたことが二つあるんです。

一つは、「カルチャーとは主体的なものだ」ということ。カルチャーって誰かに教えられるものではないと思うんです。自分が面白いというものを追求して、仲間ができて、たくさんの人に共有されると、カルチャーになっていく。自分自身で試行錯誤して発展、進化させていくことができる。高校生のときに現国の授業で魯迅の『故郷』を読んだんですが、その最後に、すごく好きな一文があります。「希望とは、もともとあるものとも言えぬし、ないものとも言えぬ。 それは地上の道のようなものである。 地上にはもともと道はない。 歩く人が多くなれば、それが道となるのだ」。これ、そのままカルチャーにも言えるんじゃないかと思っていて。参加する人が多くなればなるほど、それがいつの間にかカルチャーになっているなぁ、と。

もう一つ、「カルチャーとは好きを追求することだ」とも気づきました。国内外のコレクション会場、原宿のストリートなどでずっと撮影してきて、これをとても強く感じます。カルチャーは、本当に大好きだ、もっと知りたい、もっと深めたいという気持ちが出発点で、そこから始まっていくものなんじゃないかな、と。カルチャーが生まれる過程について、自分の経験と照らし合わせて思うことがあります。最初に「トレンド」が生まれ、それに対して探究心を持って掘り深める人がいる。すると周りも巻き込んで行き、より大きな「ムーヴメント」になる。そしてもっと発展し、ある一つのきっかけが挿入されると、「カルチャー」になってく。そのきっかけについては、後ほどお話ししますね。

2. 10年の節目を迎えた「ストリートスタイルシューティング」

今年の4月13日、VOUGE.comで一つの記事が掲載されました。「A Brief Oral History of Modern Street Style」と題されたこの記事では、ストリートスタイルシューティングが10年の節目を迎えたということで、その歴史の中で中心的なフォトグラファーを特集していて、私も紹介していただきました。記事の中では、WEBでのストリートスタイルシューティングの幕開けは、2007年春夏メンズミラノコレクションの際に、フォトグラファーのスコット・シューマンがMen.Style.comに写真を提供したことだと書かれています。この時から、ファッション産業とストリートスタイルの繋がりがはじまったというわけです。その後、ストリートスタイルシューティングにはいろいろなタイプのプレイヤーが登場することになります。そのフォーマットを作りあげた先駆者たちが、VOUGE.comに掲載されている人たちですね。一人一人見ていきましょう。

まずは、先ほど出てきたThe Sartorialistのスコット・シューマン。彼は声をかけて写真を撮る、人物にフォーカスしていくスタイルです。独自の視点を持って、自分が良いと思った人を撮っています。比較的トラディショナルな要素が強いかなと思います。私がやっているSTYLEfromTOKYOも、撮影についてはスコットと同じタイプにあたります。違いはそれに主観をより盛り込んだ言葉を日本語と英語で言葉をつけたし、写真と文字をワンセットで見せるというやり方をしています。

続いて、トミー・トン。彼はスネークスタイルを確立した人と言われています。スネークスタイルとは、隠し撮りみたいなものですね。彼はもともとすごくシャイで、話しかけて撮るというのが恥ずかしくって、声をかけずに撮ってるうちに、そのうちそれが流行りの撮影スタイルになったんです。このスネークスタイルがいまの主流になっています。VOGUE.com専属フォトグラファー、フィル・オーもそうです。少しウィットがあり、ユニークで、クスッと笑いを誘うウイットがある写真を撮っています。Le 21èmeのアダム・カッツ・シンディングもやはりスネークスタイルなのですが、とにかくタフで、マイナーなところで行われてるファッションウィークにも赴いて撮影しているのが特徴です。

韓国人のH.B.ナムも最初はスネークスタイルでしたが、それを捨てて、ライカのアナログフィルムでファッションウィークのドキュメンタリーを撮るようになりました。人や物ではなく、その場所の全部の空間を切り取る、というような、よりアーティスティックな方向です。Face Hunterのイヴァン・ロディックは、ファッションだけにとどまらず、食べたもの、会った人、見たもの、聞いたことすべてを彼のコンテンツとしています。Instagram、Snapchat等、プラットフォームをいち早く使いこなすのが巧みですね。ギャランス・ドレの場合、最初スナップだけでしたが、イラストを描いたり、動画を撮影したりしつつ、ファッションだけでなく人、コスメ、フードなどを言葉で紹介するというところが彼女のオリジナリティになっています。

ここで、ざっくりと撮影スタイルの推移についてまとめます。まず始まったのは、スコットや私がやってきた、「お洒落な“人”」を撮るというもの。次に「お洒落な“服”」、「お洒落な“写真”」を撮るスネークスタイル。これが今のボリュームゾーンなのですが、若干飽和状態というのがここ1、2年くらい。そうじゃないものを追求したときに、「お洒落な“空気感”を撮る」というのが出てきています。ナムのようなアナログで味のある写真というのは、一例ですね。

こういう様々な撮影のスタイルが生まれたのは、10年間、多くのプレイヤーがオリジナリティを追求し、トライアンドエラーを繰り返して切磋琢磨した結果です。自分のやりたいこと、できることと時代との落とし所を探る最適化を行ってきたのでははないかと思います。その結果、このストリートファッションシューティングというカルチャーが育まれていった。意図してやったわけではなくて、気がつけばそうなってたんです。

3. カルチャーが過熱して発生した問題

こんなふうにストリートスタイルシューティングが盛り上がり、カルチャーとなっていった背景には、参加者の絶対母数の増加がありました。まず、「撮る人」と「撮られる人」の関係性が「トレンド」となった。その次に、「撮られたい人」という新しい母数がパリコレ会場付近や東京のストリートなどの撮影スポットに流れ込んで、「ムーヴメント」になります。そして、ブランドと企業というまた新しい母数が参入する。なぜなら、撮影されることが PRとなり、経済効果を生むことに気がついたから。ここで、「ムーヴメント」が「カルチャー」になります。カルチャーには、良くも悪くも経済が必要です。お金ってガソリンみたいなもので、いままで自分の足で走っていたところから、ガソリンが入ったことで車でビュンビュンスピードアップして走れるようになったみたいに、急激にカルチャーは成長速度があがりました。ちなみに、スネークスタイルが流行っているのは、服や小物を撮ることの方が、人にフォーカスするよりもビジネスとして成立しやすいからです。

そして参加人数が増え続けた結果、パリコレが現在どうなっているかというと、人に溢れすぎて全然撮影できない。身動きが取れない人だかりの中で、いかに「しれっと撮っている風」に見せるか、みたいなことになります(笑)。そしてトミーが今年の2月頃、ストリートシューティング中に転倒して怪我をしてしまいます。カルチャーとしての過熱化の象徴だったように感じます。カルチャーを作った第一人者ですら手に負えない状況になってしまっている、というか。また、一人の被写体に無数のフォトグラファーが集まると、写真の違いが生まれなくなり、コンテンツが陳腐化します。すると、次の差異化を図る方法としてWEBへのアップの早さが勝負になりましたが、クオリティも下がるし、そもそも早さで言えば自撮りが一番だし、ここにも疲弊がみられます。

また、撮られる側の問題も生じてきました。撮られたい人が、ショー会場ごとに着替えはじめたんです。ショーを開催するブランド側がインフルエンサーに自分のブランドを着てもらうように仕込みはじめる。もしくはインフルエンサーがブランドに服を借りて着始める。フォトグラファーは自分のスタイルを持っている人を撮りに来ているのに、マネキンを撮ってるのと一緒で、ストリートシューティングの本質とずれていってしまう。いまの問題はリアリティがないことです。

4. 日本の状況、これから考えるべきこと

一方、日本ではどうなのか。2007〜8年頃、WEB上に個人で写真をアップする流れが盛り上がりました。Fashionsnap.comDroptokyoはご存知の方も多いと思います。2010年くらいには、街では撮られる人よりも撮る人の方が多いんじゃないか、くらいのブームになりましたが、自然淘汰されて今に至ります。生き残ったメディアは、いかにして存続してきたのか。見たところ、3種類あります。1、タイアップ撮影。あるブランドの服を街のお洒落な人に着てもらい、撮影します。2、SNSで人気の子にアポ入れして撮影。連絡をして来てもらうので、当然、普段よりお洒落をした状態になります。そして3、街でお洒落な人を見つけて撮る、私がやっているようなオールドスタイル。とはいえ、1と2が80%を占めると思います。やはり国内も海外もリアルではない、というところが一番の問題点であり、考え直して、本質へ立ち返る過渡期に入っていると思いますね。

このストリートスタイルシューティングというカルチャーの紆余曲折を通して私に見えたものは、「カルチャーを作るのも、育てるのも、そして衰退させるのも自分たちだ」ということです。カルチャーに参加する人たち自身がのめり込みそれを育てていき、広げていく。まず、参加する者たちの「好き」というパッションが源にあり、そこに企業のお金というガソリンが入ったことで爆発的に広がったその段階で、ある種の倫理を意識するべきです。自分はそれをどこまでやっていいのか、と立ち止まって今一度考えること。お金やビジネスを追求し続けると、カルチャーがビジネスマインドになって、成長が止まる要因になるんです。経済はカルチャーを育てもするけど、バランスによっては、その衰退のきっかけにもなる。自分たちが作っているという責任をもって参加することで、ビジネスとのバランスのとり方も意識するようになるし、カルチャーもビジネスもいい関係で成長が出来る。

先ほど話したH.B.ナムは、韓国ではじめてスネークスタイルで撮りはじめた人で、韓国国内でものすごく有名になりました。それでいろいろなクライアントと仕事をしていたんですが、あるとき、「もう僕はデジタルカメラで撮りません」と言って、一人でライカとたくさんのフィルムを持ってパリに行ったんです。もちろんクライアントから総スカンで、契約ゼロの状態でパリに行ったんですよ。でもそのやり方でこつこつと彼ならではのスタイルをまた一から作っていきました。そのうち、彼の写真を気に入るクライアントが出て、また仕事として成立し、この分野の第一人者になった。この点において、彼を尊敬しています。何かを捨てるということは新しい何かを手に入れる準備だから、どんなに今の仕事で評価されていても、次を掴み取りたいなら今のものは捨てるしかない。そのことを彼から学びました。ナムが好きだから彼の話ばかりになってしまいました(笑)。

カルチャーとどう向き合っていけばいいのか。繰り返しますが、カルチャーに対して主体的に行動することです。自分がカルチャーを動かす一員であるという認識を持つことが正しい姿勢なのだと思います。まず没頭する。自ら学び、掘って深めていく。そして、カルチャーをその次へと動かすのが、アレンジすること。素敵だな、と思っていても、すでにあるものと同じやり方じゃなくて、自分なりのアレンジをいれてアウトプットする。そうした一人一人の実践が、そのカルチャー全体を前進させていくんじゃないかなと思います。

大事なのは、カルチャーの本質を理解し、行動の判断基準の軸を持つことです。どんなに面白かろうと、お金が儲かろうと、自分自身の軸に沿ってない行動を取ったら、愛するカルチャーをスポイルすることになります。それを常に理解して、カルチャーに没頭していってほしいと思うんです。そのようにすれば、カルチャーも、自分自身も、とても健やかに成長するんじゃないかなと思います。

みなさんにとっての「カルチャー」はいろいろあるかと思うんですが、最後に言いたいのは、「you make culture」=「あなたがカルチャーを作っている」ということ。そして、「you are culture」=「カルチャーはあなた自身だ」ということ。このJUNさんのフレーズがすごく好きなんです。カルチャーを良くするのも、悪くするのも自分の気持ちひとつなんだ、という意識で、自分の愛するカルチャーに向き合っていってもらえればな、と思います。ありがとうございました!





5. 愛するカルチャーを成長させるために

カルチャーとどう向き合っていけばいいのか。繰り返しますが、カルチャーに対して主体的に行動することです。自分がカルチャーを動かす一員であるという認識を持つことが正しい姿勢なのだと思います。まず没頭する。自ら学び、掘って深めていく。そして、カルチャーをその次へと動かすのが、アレンジすること。素敵だな、と思っていても、すでにあるものと同じやり方じゃなくて、自分なりのアレンジをいれてアウトプットする。そうした一人一人の実践が、そのカルチャー全体を前進させていくんじゃないかなと思います。

大事なのは、カルチャーの本質を理解し、行動の判断基準の軸を持つことです。どんなに面白かろうと、お金が儲かろうと、自分自身の軸に沿ってない行動を取ったら、愛するカルチャーをスポイルすることになります。それを常に理解して、カルチャーに没頭していってほしいと思うんです。そのようにすれば、カルチャーも、自分自身も、とても健やかに成長するんじゃないかなと思います。

みなさんにとっての「カルチャー」はいろいろあるかと思うんですが、最後に言いたいのは、「you make culture」=「あなたがカルチャーを作っている」ということ。そして、「you are culture」=「カルチャーはあなた自身だ」ということ。このJUNさんのフレーズがすごく好きなんです。カルチャーを良くするのも、悪くするのも自分の気持ちひとつなんだ、という意識で、自分の愛するカルチャーに向き合っていってもらえればな、と思います。ありがとうございました!



あなたを作ったカルチャーは何ですか?

「ストリート・シューティング」

私を作ったカルチャー、それは“ストリート・シューティング”です。パリのコレクション会場から東京のストリートまで、街で気になったおしゃれな人達のスタイルを写真に撮り、彼/彼女たちから、ファッションだけでなく、その考えや大事にしていることまでの話を聞き、それによって、自分とは違う価値観を知り、結果、相対的に自分自身の価値観を知ることができました。いわば、スナップした人たちを鏡にして、自分の“芯”にあるもの それは、ファッションだけでなく、自分の考え方や生き方までも を見つけることができたのです。

一方で、私を作った“ストリート・シューティング”というカルチャーは、10年前に誕生して以来、SNSの発達とともに世界中に大きく広がり、現在では世界中のファッション産業に影響を与えるまでになっています。ファッションが大きな変わり目にあるなか、 あるいは、変わらなければいけない時期にあるなか、私たちの“ストリート・シューティング”が、商業主義に流されがちな現在のファッションにもう一度、ストリートの“リアル”な興奮を呼び起こすことができはしないかと考えています。

シトウレイ ストリートスタイルフォトグラファー

石川県出身、早稲田大学卒業。日本を代表するストリートスタイルフォトグラファー。「STYLEfromTOKYO (reishito.com) 」を軸に雑誌、新聞幅広いメディアで活躍中。広大なネットワークと軽妙なフットワークで世界各地でスナップ写真を撮り続けている。

Fashionista.comにてMost Influential Street Style Bloggers に選出、2013年にはNYを拠点に人気を集めるアートメディア、BLOUIN ARTINFOの選ぶ「注目すべき日本のファッションブログトップ10」に選出される等国内外からも注目されている。

著書、東京ストリート写真集「STYLEfromTOKYO」(discover21刊)はコレット他世界中で販売中。近著東京ガイド「日々是東京百景」(文化出版局刊)は中国語版が展開されている。ストリートファッション・フォトグラファーの権威、Sartolialistの著書に特集を組まれるなど、ファッションアイコンとしても名高い。

ストリートスタイルからランウェイまでファッションに対する幅広い知見から企業のアドバイザー、ファッションセミナーなど幅広いジャンルで活躍している。

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